I&G 研究例会
3月9日(日) 13~17時 上智大学10号館3階 301教室
【全体会議】 13:00~13:45
【プログラム】
14:00~15:20
研究発表
「Lostにおける韓国人夫婦の表象 –愛の復活と英語による同化ナラティブ–」
発表者:俣野裕美(同志社大学大学院 社会学研究科メディア学専攻)
コメンテーター :斎藤綾子(明治学院大学)
(休憩)
15:30~17:00
ラウンドテーブル
会田誠展と「森美術館問題」から見えてくるもの
司会:池田忍(千葉大学)
パネリスト:笠原美智子(東京都写真美術館)
北原恵(大阪大学)
西山千恵子(千葉大学)
ほか予定
以上
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研究発表要旨:
本研究は、アメリカのテレビドラマ、Lost(2004-2010)に登場する韓国人夫婦、ジンとサンの表象を考察したものである。ドラマの序盤では、過去の結婚生活で生じたしがらみから、二人の仲は冷え切り、愛は破綻した状態であった。ストーリーの展開に従って、彼らはゆがんだ関係性の改善を試みるが、その中で英語が大きな役割を果たしていた。二人の会話の中に、母国語の韓国語ではなく、英語が取り入れられることによって、その関係性は少しずつ改善を見せ、終盤には愛情が完全な復活を遂げていた。引き換えに、韓国語は捨て去られてしまっていた。アメリカ社会において、英語とは権力者の利益獲得と密接に結びついたヘゲモニックな主流言語として機能している(サンダルソラ 2010)。ジンとサンの愛情の復活は、このような英語を取り入れ、アジア地域の言語を捨てる、つまり、アメリカの主流文化へと同化することによって成り立っているのである。Marchetti(1994)はアジア人と白人の恋愛を描いたハリウッド映画を分析し、アジア人がアメリカの主流文化に同調する物語を「同化ナラティブ」とし、これには白人の権力者が優位に立つ社会構造を維持、強化する作用があると指摘した。ジンとサンの同化の表象もこの枠組みを大枠で踏襲しているといえる。二人の表象は、マイノリティや他国の人は、英語による同化を通して望ましい状況を獲得できるということを示しており、アメリカ社会の権力者の優位性を維持、強化しようとするヘゲモニーを内包している。